インラインとスキーの感覚について

まず、選手が「感覚」という言葉で使うものを2つに分ける事が出来ると思います。

フィードバック感覚とフィードフォーワード感覚です。

(1)「こういう風に体を動かそう」の感覚が(FF)フィードフォーワード感覚

(2)「結果、こういう感じが返ってきた」の感覚が(FB)フィードバック感覚

これら2つの体感感覚に加えて、更に、指導者が選手を見たり動画を見る事によって視覚というもう一つの感覚を得ます。

(3)「こういう動きに見える」の視覚

インラインとスキーで感覚が違うというお話がありますが、ごっちゃに話されている事が多いように感じます。私はこれらは感覚と言ってもそれぞれ独立しており一概に語れないものだと考えます。インラインを履いてスキーと同じFF感覚で滑ったすると、FB感覚はスキーとは別の感覚になると思います。また、視覚も別のものになるでしょう。

例えば、スキーと同じFF感覚でインラインを踏んでいったら、インラインのグリップでは耐え切れず、ズレてしまうでしょう。結果、板がたわむ感覚とは別のFB感覚が発生します。また、視覚もカービングターンとは別の現象は発生しているように見えるでしょう。

次に、同じFB感覚を求めて滑ったとします。インラインでスキーと同じFB感覚を得る為の動作をするFF感覚はスキーとは別の感覚になると思います。視覚も別になるでしょう。例えば、インラインでスキーと同じように外足に圧を感じて乗れているというFB感覚を求めて滑ったら、スキーのように強い外力を発生させる為に、かなりひねって滑るFF感覚が必要になります。このFF感覚はスキーとは別物ですし、視覚も外スキーをたわませて滑るそれとは別物に見えるでしょう。

次に、同じ視覚になるように滑ったとします。インラインでスキーと同じ見た目にする為の動作をするFF感覚はスキーとは別の感覚になると思います。また、その時発生しているFB感覚もスキーとは別の感覚になると思います。例えば、スキーと同じように身体全体で傾くシルエットの視覚で滑ったとします。この時にインラインでは外足に荷重できなくなるほどに傾くFF感覚が必要があり、FB感覚も内足荷重になり、外足は地面に添えているだけになります。この上で更にFB感覚も合わせて外足荷重の感覚を得るには更に外足をひねる必要があり、FF感覚はスキーとは全く違ったものになるでしょう。

因みに、上記個別の事項についても「インラインでは出来ない」というのは大抵インラインが下手だからかと思います。個別では大抵寄せる事は出来ます。例えば「インラインはズラせない」といういうのはインラインが下手だからです。インラインでもスライドさせることは出来ます。スキーでカービングターンが出来ない人が「カービングなんてない」と言うようなものです。見た目も練習すれば似た形には寄せられます。

とは言え、これら3つが同時に同じ感覚で得られるという組み合わせは難しいと思います。残念ながら私は知りません。スキーにもインラインにも色々な滑り方があるので、もしかしたら3つマッチする組み合わせがあるのかもしれませんが、現在私には出来ません。また、出来る人を見た事がありません。

ただ、なんとなく、イタリアのスキーの滑り方とインラインの滑り方は近いのかもしれません。

元、スキー・インラインの選手で、現在スキー・インラインのプロコーチのステファノの滑り。

基本的には、FF感覚・FB感覚・視覚は独立しており、FF感覚が同じになったらからと言って他2つが同じになったり、FB感覚が同じになったらからと言って他2つが同じになったり、視覚が同じになったらからと言って他2つが同じになったりはしないという事です。

もし、インラインを自分でそれなりに滑走した事のない指導者が、視覚だけで「感覚が違う」と言っていたり、見た目近しい動きになった選手を見て「同じ感覚になった」と評価しているのであれば、それは違うと思います。また、インラインをオフトレとして取り入れた人が、感覚が同じ/違うという事に対しては、どの感覚の事を言っているのか確認すると良いかもしれません。そして、技術トレーニング的にオフトレとして活用したいのであれば、どの感覚をトレーニングしたいのか明確にして行うと良いかもしれませんね。

個人的には、無理に技術をリンクさせるのではなく、一つの別のスポーツとして取り組み身体能力や基礎の運動スキルを高める方が良いように思います。

Atsushi has written 134 articles

Japanese player of Inline Alpine
PH.D. in Sports science
IT trainer

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